海抜活動電位

twitterばかりで長い文章や残っていく文章を書けなくなったのでその練習です。日々のこと、見た作品のこと、創作についてブログしていきます。

そりゃ当たり前なんだけど「秘匿」って怖いよね。-ミッドサマー感想-

前置き

やっと見られましたミッドサマー。正直一回目は怯えながら見てたので考察ができるなんてもんじゃあないんですけど。

まあ13日以降のディレクターズカットを見てまた考えます。

へレディタリーほどではなかったけどしっかり怖くて流石だなあと思ったので、その怖さに主眼を置いて今回は話したいと思います。

 

 

追記による注意!!!

この感想はガッツリ

ネタバレを含んでいます!!

見てから読んでいただけたら幸いです!(見ていない人に対する優しさのある読みやすいネタバレでもないので)

 

(読み返しててだいぶ「実はレジロックレジアイスレジスチル空爆被害者の暗示だった!」みたいな考察に見えてきて辛いんだけど大丈夫か?) 

 

 

 

 

ホルガの夏至祭の恐怖

秘匿。

 

それに尽きると思う。そしてこの秘匿は入れ子構造になっているのが恐ろしかった。

外部に対する秘匿

いや見てればそんなこと分かるよって感じなんだけど

  • 一本道から脇道にそれた形でホルガにたどり着く地理的なもの
  • 脱走しようとすると殺されるシステム的なもの
  • 電波が入らない電子的なもの
  • 睡眠時間を完全にホルガに完全にコントロールされるという時間的なもの(多分マークが最後まで昼夜の感覚が正常で昼寝をしたがっていたと思っている)

によってされている。

内部に対する秘匿

更に内部の人間にさえ知り得ない内部の秘匿が存在するように思えた。

  • 「何のパイ?」と聞かれて"meat pie"としか答えられない(これは外部に対する秘匿で「答えてないだけ」かもしれないが)女性
  • 痛みや恐れをなくすイチイの木から採取したエキス」を舐めさせてもらったのに死ぬ間際に結局熱さで悶える男性*1(イングマールかウルフかは覚えていない)

といった部分で描写される。

僕が一番映画で怖かったのはこの

「自分で志願して、恐怖や痛みがなくなるよって『家族』から言われたのにめちゃくちゃ怖いし痛い中死んでいく」シーン

だった。

確かに劇中一番のゴア描写だった崖から身投げするシーンは確かに一瞬目を瞑りかけた。

でも2人は厳かな儀式の末に決意して死んだし、灰も先祖の木へと帰っていった。(BBQのグリルみたいので焼くから最初死んだ肉食べるのかと思ってドギマギしたけど……)

それとの対比が一番怖くて終盤のセックスシーンや体外肺露出の刑で笑っていたのが凍りついてしまった。

 

 時間経過による秘匿

上で述べた夏至祭の秘匿はその時点(今回なら2019年)におけるものだが、それだけではなく時間の流れを利用した秘匿も内部の人間に向けてされていると感じた。

 

ホルガにおける生命のサイクルは「72年で一周。それ以降は死」と説明がある。

この説明から

①90年に一度の祝祭を2回見る人はいない

②古来より伝わる伝統にしてはライフスパンが長すぎる

③祝祭もライフサイクルも9の倍数(最大公約数は18)、といったことが考えられるので詰めていきたい。

③については公式サイトのネタバレ有り解説で触れられている[1]かつ自分にはちょっと胡乱だなと感じられたので割愛。

 

祝祭を2度経験する人はいない

このため前回と同じ祝祭が行われているという保証はどこにもない。流石に伝承はされているだろうが、聖典であるルビ・ラダーは人為的に生み出された精神障害者”賢者”によるルーンを読み解くしかないとなるとその再現性はかなり低い。

 

長老たちによるルビ・ラダーの解釈にいくらでも個人的な事情は入れられるだろうし、閲覧が困難*2と考えるとホルガ内部の人間全員が理解しきっているわけでもなさそうだ。

なんなら、最後クリスチャンとの二択として選ばれた人、村の上層の人によるルーンの読み上げで選出されたけどそれすら最初から決まっててどのルーンが出てもあの人になったのでは?(何か罪を犯していたのでは?)とすら思う。ルーンの読み上げている面は一度も映されないので。

 

ただ「愚か者の皮剥」みたいな外部の人間に対する鉄槌は遊びとして小さい子にも幅広く伝承されて確固たる基盤を築いているのではないかと思う。そこはホルガの長老にとって揺るぎないものであってほしいだろうし。

長すぎるライフスパン

スウェーデンの寿命は北欧の国らしく82.2歳(世界銀行より)と長寿なので72歳で人生の幕を閉じるのは普通の話かもしれない。けれどそれは戦後の話で90年前はそもそもそこまで生きるとは想定されていないだろう。

 

 

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スウェーデンの平均寿命の推移。90年前も載せてほしかった……

 

にもかかわらず72歳を終点として人生を4分割するのは思考が現代的すぎる

なんなら1750年のスウェーデンにおける平均寿命は38歳で「夏」が終わったと思ったら死んでしまう。[3]*3

 

これは祝祭が現代風にカスタマイズされた結果ではないだろうか。54~72歳の人間が下の者に対して「教えを施せる」システムの構築のために。

逆に72歳以上の自分たちにとって邪魔な人間を排除するための口実にもなる。(自分でも胡乱だなあと思うので斜体)

 

ここの辺りの説明から祝祭はホルガの長老によってコントロールされ、真相は内部の人間にさえ秘匿された状況なんじゃないかなあと思う。ホルガの人間は「生命の輪」という理念の基皆一つの方向を向いている(だからこそコミューンって呼ばれている)はずなのに全然立場によって違うのでは?というのはミッドサマーで僕が一番感じた恐怖でした。

 

とりあえず今回はここまで。

次話したいこと(疲れただけ)

A.医療面について:①出てきた薬剤②マダニ媒介脳炎③麻薬(これはほとんど疑問で終わると思う)

B.レペについて:レペはダニーが「家族」になる見込みがデカいと思って呼んだのでは?ダニーにあげた絵、実はルーン入りだったのでは?レペとイングマールは実は水面下で競い合ってて、最後に生贄にイングマールが名乗りを上げたのは自分が連れてきた人間は不出来だったからでは?

C.ダニーの行方は?(これは語れない気がする)

D.ミッドサマーとへレディタリーについて:三角形、赤の使い方など

とかですね。(ここでだいぶ出し切ってないか?)

ではまた。

 

 

 

 

 

参考文献

[1] https://www.phantom-film.com/midsommar/mystery/index.html

[2] http://www.ipss.go.jp/publication/e/jinkomon/pdf/19360403.pdf

[3] https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%B3&oldid=75269551

 

 

*1:実際、イチイの木にはタキシンというアルカロイドが含まれているが、その作用は末梢神経性循環障害食欲廃絶、筋力低下、四肢の振戦、呼吸困難、心臓麻痺、心拍数減少、血圧低下、体温低下、痙攣、硬直など[3]であり「痛みをなくす」ような鎮痛作用はない。心機能の低下によって意識が薄れれば恐れはごまかされるかもしれないが最後のあの様子を見るに、何かがごまかされていた気配は皆無だ。

*2:内部の人間は見られたかもしれないが気になるのは鏡の存在だ。読んでいたジョシュと背後から迫るマークの皮を被った処刑人を同時に写す演出しかないかもしれないが、あの鏡はマジックミラーだったとも考えられる。あそこに鏡がある事自体が不自然だし、処刑人が来るまでのタイムラグもマジックミラーで確認してから襲ったからと考えると自然じゃあないだろうか。

*3:この頃の祝祭は1749年に行われているはずで、3回前でしかない。崖の上の墓石は20個以上あった(正確には数えていない)し、上の方は苔むしてもいたのでそれくらい前でも祝祭はされていたはずだ。その一方でレペのような若者でも内部の人間は驚いていない且つあの場には青少年がいないことから10代後半〜20代で既にレペ達青年はアッテストゥパンを見ているのでは?という気もするのであの儀式は90年に一度ではないかもしれない……